【歴史から学ぼう!】パンデミックシリーズ②~天然痘~


こんにちは!自粛期間で人の名前が出てこなくなった薬剤師芸人です!
今回は、「パンデミックシリーズ②~天然痘~」です!


天然痘は、この世で唯一根絶出来たウィルスです!
2020年現在自然界には存在していなく、アメリカとロシアの2つの専門機関でのみ保管することが認められています。

天然痘は当時から非常に恐れられていて、感染した多くの人が亡くなるか、もしくは生き残ったとしても顔や体に”あばた”という豆状の跡を残してしまう病気でした。天然痘の”痘”は、”病”と”豆”を合わせた漢字で、症状として豆のような膿が出ることから名付けられています。(症状の写真はこちら)


過去に日本でも周期的に流行っていて、天然痘に関連したことわざもあります。

「あばたもえくぼ」

これは、相手の悪いところも好きになれば良く見えるという意味で、あばたは相手の悪いところ、えくぼは良いところを指しています。天然痘にかかると外見に特徴的な跡が残ってしまうため、このような表現が生まれました。

天然痘の歴史



天然痘について過去にさかのぼると、紀元前のエジプトにたどり着きます。
そのミイラから天然痘にかかったとされる痕跡が発見され、それが最も古い天然痘の記録だと言われています。そこから時や場所を超え、ヨーロッパやインド・そして日本にも広まっていきました。

日本



日本では6世紀から周期的に流行し、有名な人では伊達政宗夏目漱石もかかりました。伊達政宗の代名詞「独眼竜」も、天然痘によって右目を失明したことから名づけられました。日本でも天然痘は非常に恐れられていて、人々は疱瘡神(ほうそうしん)といって、天然痘を擬人化ならぬ擬”神”化し祀(まつ)ることで、病気を軽くしようとしていました。

ちなみに疱瘡神は赤い色が苦手とされいて、魔除けとして赤い工芸品が日本各地で作られました。福島県の「赤べこ」や岐阜県の「さるぼぼ」などがこれに当たります。


アメリカ大陸




天然痘が恐れられている所以は、ある高度な文明さえを壊滅させたところにあります。今までヨーロッパでペストなどの伝染病が流行っても、文明社会は滅びずになんとか持ちこたえていました。ですが、天然痘は、当時世界最大の文明社会だったアメリカ大陸のアステカ帝国とインカ帝国を滅ぼしました。インカ帝国といえば、空中都市マチュピチュ遺跡や太陽の祭インティライミが有名です。


文明の違い
マヤ文明 アステカ文明 インカ文明
時期 紀元前1000~16世紀 14世紀~1521年 1438~1533年
文字 あり なし なし
特徴 ピラミッド・20進法 神への生贄(人身御供) マチュピチュ遺跡



この2つの地域は、コロンブスによって新大陸が発見されたのを機に、スペイン人によって侵略されようとしていました。

スペイン人が侵略しにくる1519年、アステカ族にはその年に神が帰還するという予言があったため、スペイン人は神様だと思われ歓迎されました。結果として、この予言がアステカ族の命取りになりました。スペイン人に感染していた天然痘がアステカ族にうつってしまい、帝国じゅうに広まって大勢の人が亡くなってしまったのです。そして1521年に、兵力ともに弱ったアステカ帝国はスペイン人によって征服されました。

当時はあまりに多くの人が亡くなり、墓を作って埋葬するのが難しかったので、住んでいた家を破壊して墓として扱っていたそうです。


そして、インカ帝国でも天然痘によって当時の指導者が亡くなったため、後継者を巡って内戦が起きていました。1532年にスペインは、ちょうどその内戦と天然痘で疲れ果てていたインカ帝国を侵略し、スペイン167人:アステカ8万人という圧倒的不利な状況でも勝利を収めることが出来ました。


今日では、天然痘によってアメリカ先住民の90%が亡くなったとされています。


原因と症状

原因

wikimedia commonsより



天然痘は”天然痘ウィルス”によって引き起こされます。
エンベロープという殻を持っているDNAウィルスで、消毒用エタノールでやっつけることができます。

このウィルスは動物から感染することはなく、ヒトとヒトの間だけの感染となります。
感染経路は主に2種類で、感染した人のくしゃみや咳による飛沫感染と、皮膚の膿(うみ)やかさぶたによる接触感染があります。感染力も非常に強いため、患者の衣類やシーツとの接触によって感染することもあります。また、膿の後に出来るかさぶたにも長期間ウィルスが含まれるので注意が必要です。



もともとこのウィルスはラクダが起源とされていて、それが変異してヒトだけが感染する”天然痘ウィルス”になりました。そのためウィルスは異なるものの、天然痘に似た病気が動物でも発症することがあります。有名なところであれば牛が発症する牛痘(ぎゅうとう)や、猿のサル痘・ラクダのラクダ痘が存在し、これらの天然痘に似た病気は動物から人間にかかることがあります。

16世紀のアステカ・インカ帝国での流行は、こういった牛などの家畜を飼っていなかったのが原因だと言われています。ヨーロッパ人は牛を飼っていたため、天然痘に似た牛痘の免疫を自然と備えていましたが、当時のアメリカ大陸で飼っていたのはリャマやアルパカだったので、先住民は未知のウィルスに抵抗できずにやられてしまいました。

症状


天然痘と水疱瘡の違い
天然痘 水疱瘡
致死率 20~50% 0.0038% *
感染 ヒトのみ ヒトのみ
発熱の時期 発疹の2~4日前 発疹と同時
発疹の部位 腕と足 胴体
手の平・足の裏 発疹あり 発疹なし



症状は子供の頃によくかかる水疱瘡(みずぼうそう)と似ています。
高熱と発疹があり、発疹は時間が経つとかさぶたになり自然とはがれていきます。




天然痘は水疱瘡と比べて、症状がゆっくり進みます。そのため治療にかかる期間も長く辛抱が必要です。また水疱瘡は、すべての発疹がかさぶたになったら感染力が無くなるのですが、天然痘はすべてのかさぶたが剥がれ落ちるまで感染力が残っているとされています。


世界で最初のワクチンを開発-ジェンナー



冒頭に紹介した通り、天然痘はあらゆる感染症の中で唯一根絶出来たウィルスです。
根絶できた背景にはイギリスの医師ジェンナーの活躍にあります。

ジェンナーが育った農村部では、乳しぼりをしている女性たちは天然痘にかからないことが知られていて、その人たちは共通して牛痘に感染したことがありました。そこでジェンナーは、牛痘が天然痘の予防になると考えて、牛痘にかかった人の膿を使用人の息子に接種した後に、天然痘の膿を接種する実験を行いました。

幸運なことにジェンナーの考えは正しく、使用人の息子は天然痘にかかりませんでした。1798年に牛痘接種法を発表して以降ヨーロッパ中に広まり、1980年についに根絶することに成功しました。

牛痘を接種するという行為が受け入れられない人もいました。それは当時書かれた絵画からも読み取れます。↓の絵は、牛痘を接種された人達から牛が生えてくる風刺画です。



↓の絵は打って変わって、牛痘接種法によって天然痘にかからないことをアピールしたものです。



ちなみにワクチンは英語で「ヴァクシーン(vaccine)」というんですが、これはラテン語で”牛”を意味する「ヴァッカ(vacca)」から来ています。


2018年承認!史上初の天然痘治療薬

テコビリマット-Wikimedia Commonsより



2018年7月、アメリカのSIGAテクノロジー社が開発した「テコビリマット」が、天然痘ウィルスに対する治療薬として承認されました。天然痘は自然界に存在していないので、代わりにサル痘やラビット痘が使用された試験を行ったところ効果が確認されました。

また2007年にアメリカで、天然痘ワクチンを受けた父親の接触によって、息子が天然痘に似たウィルスに感染してしまいました。そこで当時は承認されていなかった「テコビリマット」を投与したところ症状が改善されたという報告もございます。



もし万が一、再び天然痘が流行するようなことがあったときには、テコビリマットが活躍するかもしれません!



以上、「パンデミックシリーズ②~天然痘~」でした!
読んで下さりありがとうございます!



参考:

「ビジュアルパンデミック・マップ」-サンドラ・ヘンペル

「世界史を変えた13の病」-ジェニファー・ライト

「第3回21世紀成年者縦断調査」
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/kakutei18/dl/02_kek.pdf

「水痘について」
https://kansensho.jp/pdf/wakuchin_suitou_qa_2014.pdf

https://www.niid.go.jp/niid/images/idsc/kikikanri/H28/13-3.pdf

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